(情報公開)不動産登記簿記載情報から思うこと。
不動産登記簿に記載されている情報は、「誰でも」法務局に請求すれば取得することができます。
不動産登記簿には、不動産に関する権利関係の変動や表示に関する情報が書かれていますので、個人情報の塊のように感じるのですが、現行法では誰でも取得することができてしまいます。
不動産登記簿の取得に必要な、地番や家屋番号などは登記情報閲覧システムで調べることもできますし、法務局備付のブルーマップなどで調べることもできます。法務局によっては電話でこのような情報を検索してくれるところもあるみたいなので、地番や家屋番号などは比較的調べる手段が用意されている情報であると言えます。登記情報提供システム
また、一部の自治体では地番などを公表している場合もあるようです。グーグル検索で「地番公表」と検索するといくつかの自治体がヒットします。
このような状況下で地番そのものは、いまや秘匿性の高い個人情報とは言えないような気がしてきてしまいます。
結局、調べることができるのであるから「公に」公開されている情報と判断する方向に力が働くのだろうと感じます。
答申や判例の状況
答申検索などを見ていると、土地の所有者の氏名などは登記簿で情報が公開されているから、不開示情報には該当しないと判断されることがあります。
土地所有者の氏名が開示された事例
令和4年行情)答申182号では国有財産不動産契約書が開示請求されました。この不服申立では土地所有者の氏名が不開示とされていることが争われています。審査委員会は以下のように述べて開示することが相当であると判断しています。
「諮問庁は,当該不開示部分について,個人に関する情報であるとして,法5条1号に該当するため不開示とした旨説明するが,個人が所有する土地の所在地を本件対象文書において開示していることから,土地所有者の氏名及び住所については,不動産登記簿を閲覧すること等により,何人でも知ることが可能なものであり,慣行として公にされているものと認められる。」
また別の答申では、公開された文書に私人の地番が含まれていたことから、「その土地の所有者個人の氏名は、何人でも不動産登記簿によってそれを確認することができる者である。よって、当該部分のうち所有者個人の氏名は、法5条1号ただし書イの法令の規定により公にされ、又は公にすることが予定されている情報に該当し開示すべきである。」と判断されています。平成30年(独情)答申59号
こちらの答申は、上で紹介した答申と比べて「法令の規定により公にされ、、、。」として適用の仕方が異なる部分は注目されます。
わたしは、登記簿は法令の規定により公にされている情報であると考えてます。
私の思うところ
上で見てきたように、登記簿で取れる情報は、「登記簿で公開されているということ」を通じてj情報公開でも公開されるということが言えそうです。
そうすると、以下のような疑問が生じます。
「はじめの方に書いた通りに「地番」の検索もいまや多くの手段があります。つまり、地図情報から読み取れる建物に関する情報はすべて開示することができる情報となるのでは?」ということです。
この点、関連する判例として高松高判平成22年3月18日があります。この判例は、「公図上の特定の筆界点を街区店に近づけるという補正がなされた図面」を公開請求したが不開示とされたことが争われた事例です。高判は補正がなされていることを理由に公図上と同一の情報ということはできない情報である(よって法令の規定により公に、、ではない。)ことを理由として上訴を棄却しています。
この判例を翻って読むと、公図と同様の情報であるものは開示されることになると考える事もできなくはないとい言えそうで。
また、「地番」に関しては登記簿を取得することで所有者の氏名などの情報を得ることができるから、個人情報であると述べています。
このあたりを整理しておくと、登記簿で調べることができる情報は「個人情報」に該当するが「公にすることが予定されている」から不開示情報であるということが原則であるということができます。
結局、登記簿や公図を通じて多くの個人情報を取得することができてしまいます。個人情報保護制度は多くの規定を通じて、プライバシーを守っていることは周知の事実です。それに対して不動産登記制度の「誰でも」ということで今では当たり前に登記簿が取得されています。このあたりのバランス感覚に少々の違和感があるのです。
もっとも、不動産に関する公示制度としての役割などもありますので問題は複雑なことは言うまでもありません。
なお、国土地理院HP、測量行政懇談会「地理空間情報の活用における個人情報の取扱いに関するガイドライン」平成23年、というガイドラインに測量や図面での個人情報に対する考え方が詳細に書かれています。
当事務所の紹介
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北原 伸介
情報公開請求や公文書の管理に関心が強い行政書士。
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