(情報公開)指定管理者制度について
このページでは地方公共団体において行われている、指定管理者制度に関して書いています。制度等に関する意見については個人的な見解であり行政書士会の意見ではありません。
目次
指定管理者制度について
指定管理者制度は公共の仕事を民間事業者に広く開放する政策の一つです。
地方自治法(最終改正平成31年法律第3号)(第244条の2第3項)では地方公共団体は公の施設の目的を効果的に達成するため必要がある場合は情っ例の」定めるところにより、法人その他の団体を指定看視者都市、公の施設の管理を行わせることができると定めています。
その目的は
① 民間事業者の活力を活用した住民サービスの向上
② 施設管理における費用対効果の向上
③ 監視主体の選定手続きの透明化
であると説明されています(下記資料2参照)。
指定管理者制度を導入するうためには条例で一定の事項を定めなけらばならないとされています。
また、指定管理者に指定された団体は、毎年度終了後、事業報告書を提出しなければならないとされています。
地方公共団体の長は、指定管理者について指示、業務の停止命令等を行うことができ、指定管理者を監督することができます。
指定管理者制度が導入されている施設数は令和3年4月時点で77,534施設にのぼり、全国的に多く利用されている制度であると言えます(資料3参照)。
指定管理者が管理する公の施設としては、体育館、競技場、学校施設の一部、宿泊施設、展示場、産業情報施設、公園、公営住宅、水道施設、霊園、湾岸施設、図書館、公民館、介護支援センター、児童館、保育園等のさまざまな施設があります。
管理の範囲
指定管理者が管理を行っているとしても、当該施設を包括的に管理しているわけではなく、当該施設の一部を管理している場合もあります。情報公開請求をする際には、指定管理者がどの部分を管理しているのか?ということにも留意しなければなりません。
指定管理者と情報公開
指定管理者の情報公開に関しては、東京都のように条例で定めている場合もあれば(東京都情報公開条例38条)、市区町村の情報公開条例レベルでは定められていないこともあります。もっとも、指定管理者を公募する場合の要領に「情報を公開するように努めなくてはならない」と記載し情報公開に関する事務を積極的に行なうように促しているケースもあるようです。
なお、東京都条例や多くの自治体の、指定管理者に対する情報公開条文では「公開に努めなければならない」と書かれています。すなわち、努力義務です。住民の側から言うと「具体的な請求権があるわけではない」という取扱いになっています。
一方、指定管理者ではなく役所に対する請求は「原則として公開しなければならない」という取扱いで、住民の側に請求権があります。
指定管理者に対する請求も「原則として公開しなければならない」とすることが望ましいと考えますが、指定管理者の事務処理能力等を勘案すると、努力義務とすることが現実的なのかもしれません。
(注)ごく一部の条例では、指定機関を情報公開実施機関としていことがあるようです。
情報公開請求の方法
指定管理者に対する情報公開請求の流れは、基本的に地方自治体に対する情報公開と同様の手続で行うことになります。
指定管理者に対する情報公開を行う際には、開示請求書の様式があるかないか確認する必要があると思います。もっとも、中央省庁に対する開示請求では、様式によらないものであっても必要的記載事項が記載されていれば、適法な開示請求であるという取扱いです。そのあたりを説明して請求書を受付てもらう方法もあり得なくはないです(条例で様式によるとされているときは×)。
指定管理者に対する情報公開では、相談などは役所の担当課で行うことが有意義であると思います。その際に様式のことも聞いてみましょう。
なお、不作為に対する審査請求はできないと解されます。ですから、開示請求書を受付ても事務が進まない場合には、「お願い」するしかありません。
資料
1,指定管理者制度の運用について(総務省リンクPDF)
2,公の施設の指定管理者制度について(総務省リンク‘PDF)
3、指定管理者の導入状況調査(総務省HPリンク)
4,田中孝男「指定管理者に関する情報公開の現状と課題」北九州大学学術情報リポジトリ https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/19549/p52-64.pdf
指定管理者制度に対する情報公開の問題点
・指定管理者の情報公開制度に関する理解度は、各々の指定管理者によって相当バラつきがあると推測できます。なぜならば、民間であるため公務員のように法律に対する素養が期待できないからです。
その結果、窓口対応もバラつきがあるため情報公開に関する教示はいただけない場合が多く発生すること予想されます。実際に私も指定管理者職員に公開手続きがあるかどうか?ということを伺ったことがあるのですが、そもそもの情報公開制度を知らないようで「役所に聞いて下さい」との回答をされた経験があります。
・指定管理者の開示不開示には審査請求を行うことができない。
・保存期間表やファイル管理簿の不在
行政機関ファイル管理簿に該当するような保有文書を推認できるアイテムがありません。そのため、どのような文書があるか推測しながら進める必要があります。
※ファイル管理簿、保存期間表については資料5,6
・事業者であることから営業上の秘密に該当するノウハウ等は開示されない。
行政機関ではないので、営業上の秘密に関するものは開示に消極的になることが推測されます。しかし、よく考えてみると、指定管理者制度は、自治体の事務を民間に開いているだけなのです。したがって、行政機関が行っていれば開示されるような情報が、指定管理者であることから開示されないという状況はあり得るでしょう。つまり、指定管理者制度は、民間事業者に行政の事務を開くことで多くのメリットが得られるところ、多面では、行政事務の透明化にブラックボックスが生じるというリスクはあるのではないでしょうか。
公開事務の取扱い
私の肌款から言うと公開事務の理解やそもそもの「指定管理者」に関する理解が各窓口(指定管理者)で相当異なるようで混乱があるように感じます。そして、指定管理者の窓口を担当している人は会社員や団体構成員であるので、条例や法令の話には疎いので話ができません。
ですから、私の場合ですと相手の立場や理解を推測理解して、それが間違えでも否定せずになんとか事務を進めようと試みています。
資料4では各自治体の取扱いの違いを学術的に整理しています。それによると。
① 指定管理者自身が情報公開を行う。
② 指定管理者の情報公開に関して自治体で公開請求を受けて、自治体が指定管理者に情報提供を要求し公開する例があると整理されています。
いずれにしても、情報公開事務に関しては役所と相談しながら行っているということは容易に想像できます。
そうすると、指定管理者に対して相談するよりも役所の政策担当課を通じて話を進めることが現実的であるような気がします。
処分性
上記のように、指定管理者に対する情報公開に応ずるかどうかは努力規定であるために、指定管理者の行う不開示を「行政機関の行う処分」と解することができない=審査請求ができないという欠点があります。
答申状況
以下の文は筆者が便宜、端折っています。審査請求等の参考にする場合には必ず原文にあたって下さい。
中野区
市民が区に対し、A社が指定管理者の応募書類として提出した提案書の公開請求をおこなった事例(リンク中野区HP)
「提案書に記載されている事業者のアイデア・ノウハウもそれが事業場明らかに不利益を与えると認められない限り、区政の一部を担当する事業者が区政担当者として的確であるかどうかを判断するために必要であるから、原則公開されなければならない。このことは、実施事業活動の内容である履行計画書が原則公開とされる運用であることからも当然と判断される。」
大田区(市民が区に対し)
(請求文書)令和2年度分における施設の委託管理費及び1年間の経費を記載した文書。
(答申)
公開された場合の営業上の不利益を判断するにあたり、指定管理料が公金から支出されているという性格に鑑みると、通常の民間事業者とくらべると慎重に判断する必要がある(大田区HPリンクPDF)。
※ 指定管理者に対する開示請求に関する答申は見当たりません。(上述のように、指定管理者の行う、開示不開示には処分性がないのです。)
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北原 伸介
情報公開請求や公文書の管理に関心が強い行政書士。
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