(情報公開制度)権利の濫用、いやがらせ。
情報公法における権利の濫用については、明文の規定があるわけではありません。
しかし、昨今、閲覧もしないのに大量の公開請求をおこなうなど、明らかに情報公開制度を利用して事務の停滞を目的とする行為があります。
それらの、行為に対応するために各自治体において、権利の濫用に関する条例を作成されていたり、いなかったりします。
(ちなみに、条例で権利の濫用に関する条文がなかったとしても、権利の濫用として開示請求を却下することはできます。)
権利の濫用に値する情報公開請求をほおっておくと、行政事務の停滞や、職員のモチベーションの低下にもつながり非常に問題があると感じます。
けれども、開示請求をして、不正なお金の流れをあぶりだすような場合には多くの文書開示し閲覧をしなければならないような状況もあり得ます。また、行政機関は組織の体制上。いわゆる官僚制のような性質を有しています。そのような組織は、情報を自己の手の中に置いておくことで、他者よりも優位な立場を堅持しようとする力がどうしても働いてしまうと言われています(西尾勝『行政学〔新版〕』2001年有斐閣395頁。参照)。
そのようなこともあり、情報公開制度に対して権利の濫用による制約をかけることについては慎重な態度が必要であることが言えるでしょう。すなわち、「どのような場合に権利の濫用となるかどうか?」の基準を定めることは、なかなかに難しい問題なのです。
この点、大量請求などでの事例においては「文書が特定されていない」として補正を求めるような運用が行われる場合もあります。権利の濫用としてではなく特定の問題として扱う方法です。
たしかに、情報を公開するとしても閲覧できないような大量な文書を開示することを法が予定していないと考えることもできるように思います。
東京都の対応
コメント
東京都のガイドラインを見るかぎりでは、よほどの不当、違法であることが明かな事例でしか権利の濫用とならないようです。しかし、私たち国民の行政職員に対する対応が常識的であることは行政職員の職務へのやりがいを高めますし社会にとって有意義であることは疑いようがありません。
当事務所の紹介
東京都中野区にある当行政書士事務所では、情報公開に関する代理や相談の事務を行っています。
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北原 伸介
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