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(情報公開)行政文書ファイル管理簿に無い文書(軽微事案等)に関する考察

2024年2月22日

このページでは、行政文書ファイル管理簿に無い文書や保存期間が一年未満の文書に関して書いています。なお、筆者の意見は個人的なものであり行政書士会は関係がないのでご留意くださるようよろしくお願いします。

また、本件記事は、筆者が「情報公開請求に資すると思う部分を抜粋して記載しています。法律そのものなどは、書籍などに当たって下さるようお願します。

公文書の管理に関する法律

はじめに法律では、文書の保存等に関してどのようなルールがあるのか見ていきます。

行政文書の管理に関しては、「平成二十一年法律第六十六号、公文書の管理に関する法律」を中心とし、各省庁にその派生として文書取扱規則があり、そのまた派生として規則細則が定められています。なお、政令では各省事務に関する取扱いが発せられ内閣による法律の統制が行われています。

また、事務に関する問題点などに対し、各省庁が集まり会議を開いて、「申合せ」として文書に取りまとめて公表する慣行もあります。

このように、さまざまなルールや方針があるのですが、そのおおもとになるのは「公文書の管理に関する法律(以下、法という。)」であるということができます。 公文書の管理等に関する法律e-gov

 

公文書の管理に関する法律に明記される公文書のルール(公開請求に役立つもの)

行政機関の職員は、処理に係る事案が軽微なものを除き文書を作成しなければなりません(4条)。

それも、「行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程」、「事務事業の実績を合理的に跡付け、又は検証できるように」作成しなければなりません。そのために必要な事項の例として法4条は

1,法令の制定又は改廃及びその経緯
2,閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯
3,複数の行政機関による申し合せ又はほかの行政機関若しくは地方公共団体に対して示す基準の設定及びその経緯
4、個人又は法人の権利義務の得失及びその経緯
5、職員の人事に関する事項
を明記しています。

作成しなくても良いと考えることができる文書を考える。

行政事務は基本的に文書で行うとされています(文書主義)。しかし、処理に係る事案が軽微なものである場合に関しては文書の作成が義務付けられていません(法4条)(内閣官房文書取扱規則平成13年1月6日、以下、内閣官房規則という)。

決裁文書に関して、特に急を要する等の特別の事由のある事案については、口頭で事務処理を行うことができると定めている機構もあります。この様な場合に内閣官房では、軽微な事案を除き、文書を速やかに作成し決裁を求めるとされています(内閣官房規則22条)。

以上のように見てゆくと、「軽微な事案」の解釈が問題となります。軽微でなければ、原則として文書を作成しなければならないからです。行政機関の側からみると「軽微な事案であると判断し文書を作成しなかった。」との説明ができることになります。

それでは、軽微な事案とはどのような文書でしょうか?
この点、「行政文書の管理移管するガイドライン令和4年2月7日」8頁では
① 事後に確認が必要とされるものではなく、文書を作成しなくとも職務上支障が生じず、
② かつ当該事案が歴史的価値を有さないような場合である
ことを要件として、軽微な事案の例として以下のような事務を例として挙げます。
 ア、所掌事務に関する単なる照会・問合せに対する応答、 
 イ、行政機関内部における日常的業務の連絡・打合せなどが考えられる
と説明し、さらに、当該事案が政策判断や国民の権利義務に影響をおよぼすような場合は含まれないと明記されています。

行政文書ファイルにファイルされない文書

単独で管理することが適当であると認める文書

公文書管理法5条によると「行政機関の長は、、、、、単独で管理することが適当であると認める行政文書を除き、適時に、相互に密接な関連を有する行政文書を行政文書ファイルにまとめなければならない。」という趣旨のことが明記されています。そのことから、行政機関の長が単独で管理することが適当であると認める文書はファイル管理簿にファイルされないということが分かります

組織共用性が認められない文書

公務員が作成した文書であっても「行政文書」として認められなければ行政文書ファイルにファイルされません。

「行政文書」とは
① 行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書であって
② 当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているもの
を言います(法2条4項)。

例えば、職員が個人で使用するためのメモは行政文書ではありません。しかし、そのメモを政策会議で使用したり提出した場合には組織共用性が認められて「行政文書」となり行政文書ファイルに綴られることになります。

起案文書であったとしても、担当者が作り始めて他の職員との共用がまだない場合には、非行政文書として扱っているようです。第70回公文書管理委員会資料内閣PDFリンク

一年未満の文書

公文書の管理に管理に関する法律7条では、政令で定める期間未満の行政文書は、行政文書ファイル管理簿に記載しなくてもいいとされています(同条但書)。それを受けて、政令12条では一年と定めています。
 その結果、一年未満の保存期間である文書は行政文書ファイル管理簿に記載されないことになります。
 一年未満の保存期間とできる行政文書はどのような文書なのでしょうか?
 公文書の管理に関する法施行令8条3項では「、、、、別表の上欄に掲げる行政文書以外の行政文書が歴史文書等に該当する場合には、一年以上の保存期間を設定しなければならない。」としていることから、別表上欄に記載がなく、かつ、歴史文書等に該当しないものは一年未満の保存期間とできる。と解釈されています。
 ここで、別表の上欄とは、政令の別表のことで各省共通性が高い典型的な文書が記載されています(56回公文書管理委員会、事務方、16頁参照)。
 その政令の規定を受けて、公文書の管理等に関するガイドライン令和4年では保存期間を1年未満とすることができる文書の例として以下の文書を挙げています。
① 別途、正本が管理されている行政文書の写し
② 定型的・日常的な業務連絡、日程等
③ 出版物や公表物を編集した文書
④ ○○省の所掌事務に関する事実関係の問合せへの応答
⑤ 明白な誤り等の客観的な正確性の確保から利用に適さなくなった文書
⑥ 意思決定の途中で段階で作成したもので、当該意思決定に与える影響がないものとして、長期間の保存を要しないと判断される文書
⑦ 保存期間表において、保存期間を1年未満と設定することが適当なものとして、業務単位で具体的に定められた文書
 なお、通常は1年未満の保存期間を設定する文書でも、重要又は異例事項に関する情報を含む場合など、合理的な跡付けや検証に必要となる文書については、1年以上の保存期間を設定するものとする。と明記されています。
 一年未満の文書の取扱としては、必要が無ければ即廃棄する取扱が予想されます。参考記事→学術会議問題と情報公開の状況
 また、行政機構によっては次の日に廃棄とする取扱いもあるようです。
 さらに2018年10月25日第69回公文書管理委員会19頁では、「電子の場合には1年未満のものもファイル管理簿に入っていてその後に必要がなければすてている」との事務方発言があり注目されます。
 第56回公文書管理委員会では一年未満の文書管理状況に関して質疑が行われています。
 この回の委員会では、廃棄簿等のことなども議論されていて現在でも解決されていない多くの問題点が指摘されていると思います。
・例えば面会記録のようなものは、ほとんどは1年未満ということで残されるということはないと思いますけれども、場合によっては、重要な案件だということで、課長に報告したりする場合もあるわけです。そういった場合はbン所をを残しておかなければいけないという判断が生じて、それについては共有フォルダの中に残していくというプロセスを経ることになろうと思っております。
 第69回公文書管理委員会、事務方発言
・第70回公文書管理委員会資料では、決裁を受けない型の文書に関して、最初に起案してから課長クラスに説明、了承を受けた時点で保存期間1年以上とする説明があります。なお、最初の個人フォルダでの起案のときにおいても行政文書に該当する場合もあるが、一年未満文書となることが多いと説明されています。リンクPDF内閣府
※、上記①「別途、正本が管理されている行政文書の写し」正本が無ければ写しでも「歴史等文書」に該当するのであれば廃棄できない。以前開示された「天皇・マッカーサー会見記録」はこれに該当していたようです(2017年11月8日第58回公文書管理委員会、委員発言参照)。
※「重要又は異例」の例
ある業務について、通常とは異なる取扱いをした場合(通常先決処理される事務について、本来の決債権者まで確認を求めた場合等)
(2017年11月8日第58回公文書管理委員会、事務方発言参照)
※④について
公文書監察室から公文書管理委員へ以下のような報告がある。
・「問い合わせへの応答」の範囲については、問い合わせ文書や問い合わせがあってから応答文書を作成するまでの間の一連の文書についても、④類型に該当すると判断し一年未満とすることは許容される。
・「事実関係の問合せ」の範囲については、新たに当該行政機関における意思決定をしなくても応答できる者のことと指すのが一般的。協議文書のように相手方の質問や意見を確認するためのものに対しては「事実関係の問合せ」の範囲を広く解釈しすぎないよう、運用上注意が必要。
(2019年4月第76回公文書管理委員会、資料1-1内閣府HPリンク
※⑤正確性の確保
パブコメにより、「正確性の確認によって、確認される前に作った修正前の文書がこの規定によって捨てられてしまうのではないか?との意見がありました。
 事務方の説明としては、特に修正前の文書につきまして、、、自動的にこの規程で捨てられるということではなくて、当然跡づけ、検証に必要なものであれば残していくということであるので、修正前の文書が一律にこの規定に該当するものではないと説明があります。(2017年12月20日第56回公文書委員会、事務方発言、参照。)
※⑦各文書管理者が保存期間表で1年未満として記して公表したもの。
(例)人事異動に関する文書、受験申込書、答案用紙、解答用紙等が入るとの説明があります。(第65回公文書管理委員会、5ページ、事務方説明)さらに、公文書監察室の資料によると・情報システム等の操作に関する文書のうち定型的日常的文書・個人、団体からの要望書、陳述書・会合等の路地に関する文書(開催軽易に係る者は除く)・給与諸手当に関する文書を⑦として定められていると公文書管理委員会に報告しています(第71回公文書管理委員会資料3-1リンク内閣府HP
※1年未満の保存期間の文書については、情報公開は数多くあり、そこの文書の存否が問題になるということがかなり多数ある。ですのでこのところの共有フォルダの在り方を整備して、キチンと工夫して頂きたい(2018年7月第66回公文書管理委員会、委員発言参照)。

保存期間を一年未満とする行政文書ファイル等の廃棄の記録

行政機関は組織の規則で、保存期間が1年未満の行政文書ファイル等の廃棄の記録を公表しています。

内閣官房の上記の記録を見てみると、「該当はありません」とする年度が多いことが分かります。

こちらの公文書管理委員会に提出されている資料では、一年未満の行政文書ファイル管理簿の各省の取扱状況がまとめられています→リンク(資料の課長通知は、新ガイドラインに織り込まれたため廃止扱い。「令和4年2月10日行政文書の管理に関するガイドラインの改正及び公文書管理課長通知について」)内閣府リンク

これらの、使われていない制度に関しては、公文書の管理に関するガイドライン(最終改正平成29年)に書いてあります。それによると「文書管理者は1年未満とする行政文書ファイルで廃棄が相当なものに関しては、保存延長に該当しないかを確認したうえで廃棄する。この場合、あらかじめ定めた一定の期間の中で、どのような類型の一年未満行政文書ファイル等をいつ廃棄したのかを記録し公表するものとする。」というような内容が書かれています。内閣府行政文書ファイル等の廃棄の記録(保存期間1年未満)リンク

 どうしてこの制度が全く使われていないかということを考えます。
 まずこの制度が予定している保存期間1年未満の文書は保存期間を1年未満とすることのできる文書以外の文書で、かつ、一年未満として廃棄したことを予定していることに理由があると考えます。
 ガイドラインでは保存期間を1年未満とすることができる文書の例として以下の文書を挙げています。
① 別途、正本が管理されている行政文書の写し
② 定型的・日常的な業務連絡、日程等
③ 出版物や公表物を編集した文書
④ ○○省の所掌事務に関する事実関係の問合せへの応答
⑤ 明白な誤り等の客観的な正確性の確保から利用に適さなくなった文書
⑥ 意思決定の途中の段階で作成したもので、当該意思決定に与える影響がないものとして、長期間の保存を要しないと判断される文書
⑦ 保存期間表において、保存期間を1年未満と設定することが適当なものとして、業務単位で具体的に定められた文書
 なお、通常は1年未満の保存期間を設定する文書でも、重要又は異例事項に関する情報を含む場合など、合理的な跡付けや検証に必要となる文書については、1年以上の保存期間を設定するものとする
 このように、文書の保存期間は原則1年以上とされています。一年未満の保存期間を設定できる場合は限定されているのです。
 そして、その限定されている取扱いのさらに例外である、一年未満で廃棄される行政文書ファイル等は、そもそも発生する確率が極めて低い性質のものであることが分かります。
 つまり、「保存期間一年未満の行政文書ファイル等」は合理的な跡づけや検証に必要となる文書であるのに、一年未満の保存期間を設けて廃棄してしまったものと考えることができるのです。そのため、発生する確率が低いのであると筆者はかんがえます(第60回公文書管理委員会、参照)。

公文書管理委員会56~58回あたりでは、保存期間1年未満の文書でも、どのようなものが廃棄されたのかを跡付けできるようにと議論がありました。

 

 

一年未満の文書で問題が投げかけられている例

大臣の日程表

特定非営利法人クリアリングハウスでは、大臣の日程表が、保存期間一年未満文書として、即日又は極めて短期間で廃棄されていることに関して問題を提起しています。
 同法人によると、大臣の活動は政府の活動そのものであるが、そもそもの日程表という政府活動の情報が即日廃棄され公表されない現状では、政府の説明責任が果たせないことは言うまでもないと述べます。
 詳しくは、クリアリングハウスのHPをご覧ください。
 また、この問題に関しては第56回公文書管理委員会でも意見が出ています。事務方の説明としては「必ず1年未満文書として廃棄されるわけでなく、重要な業務の一環として行われる日程の記録などであれば残っている可能性がある。」という趣旨の説明をしています。
 また、ガイドライン改正時のパブコメの意見「政務三役の日程表は一年未満としえる類型から外すべきではないか?」との意見に対し、「まず、歴史公文書等に当たるかどうか、当たらないにしても跡づけ、検証に必要ではないかという検証を行った上で、それに当たらないものが一年未満に該当するということでありますから、日程表のすべてが直ちに1年未満となるわけではない。」と説明がなされています(2017年12月20日第56回公文書委員会、事務方発言、参照。)
 結局、行政職員の文書に対する「歴史的に必要であるか?」「重要であるか?」との評価に委ねられている、言い換えれば恣意的運用もあり得なくはない現状には問題があるように感じます。
他参考としてNHK取材班『霞が関のリアル』岩波書店、2021年参照

答申の指摘

国民としては、必要な文書が破棄されると資料を辿ることができなくなってしまって、政府の活動を監視することができなくなってしまいます(171回衆議院内閣委員会第13号、三宅弘参考人意見004参照リンク)。

しかし、現実には適切な文書の取扱事務がなされない場合もあります。答申で問題となった場面に触れます。

まず、学術会議問題では内閣府、内閣官房に対して文書の取扱いに関して審査会から付言を受けています。参考記事→学術会議問題と情報公開の状況
また、いわゆる集団的自衛権に関する閣議決定に関する文書に関して、内閣法制局の事務取扱に関しても、審議会から付言ををうけています。こちらの事案は、一年未満というよりもいわゆる「没案」を行政文書として成立していないとして廃棄していた事案です。→(情報公開)内閣法制局に対し開示請求するときの資料

当事務所の紹介

東京都中野区の行政書士事務所である当事務所では情報公開請求に関する事務を取り扱っております。

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北原 伸介

情報公開請求や公文書の管理に関心が強い行政書士。 taroimo1030@gmail.com (電話)080ー7172ー8669 (FAX)03-6850ー8573 お問合せは無料です。文書に関するものでしたらあらかじめFAXいただくとスムーズです。

Posted by 北原 伸介