2024年11月8日
個人情報保護法に係る自己開示請求権に関して書いています。このページで参考とする審査請求や判例は筆者が端折って書いているため、正確性の確保の点からは原文にあたっていただきますようにおねがい申し上げます。
個人情報保護法と情報公開法
行政機関が保有する自分の情報を知りたいときに国民の皆様は情報公開法の情報公開で自分の情報を取ろうと考えることはよくあります。
「自分の情報なのだから情報公開されるだろう。」と考えてしまいがちです。
しかし、この場合には自己の情報は不開示とされます(情報公開法5条1号)。自己の情報も他人の個人情報と同様に公開されません。これは、情報公開法が請求者が誰であるかを問わずに行政機関の情報を公開することを目的とする制度であるからです。当事務所記事→
情報公開法について
情報公開法による情報公開で自己情報を開示する不適切な請求は多くあります。この様な場合に行政機関の窓口では、個人情報保護法による自己決定開示請求をすすめるとする取扱いが望ましいという指摘があります。(高橋滋ほか『条解行政情報関連三法』232頁、平成23年、弘文堂。)
個人情報保護法
上述のように、行政機関の保有する自分の情報を取得するには情報公開では困難です。個人情報保護法を使います。リンク
個人情報の保護に関する法律はどのような法律なのでしょうか?
私たち国民は個人情報をどのような相手にどのような情報を渡すか否か判断する権利を有していますよね。それは、国に対しても同じことが言えます。
しかし、国は社会保障や税制度などさまざまな政策を国民のために推進することが仕事です。そのためには、国民の個人情報を保有することが必要不可欠であることは言うまでもありません。
けれども、だからと言って無制限に個人情報を使われてしまってはたまったものではありません。
そこで、私たちが選挙を通じて選んだ者による=国会により議論された範囲の中(法律で決められた範囲)で国民の個人情報の取得の範囲、方法、取扱いを適切に行ってもらいましょうというのが個人情報保護法であると筆者は理解をしています。
個人情報の保護に関する法律で何ができるの?
個人情報の保護に関する法律で、私たち国民は何ができるのでしょうか?以下抜粋します。
1,開示請求
行政機関の保有する事故を本人とする保有個人情報の開示を請求することができる(12条)。
2、訂正請求
事故を本人とする保有う個人情報の内容が事実でないと思慮するときは訂正を請求することができる。
3,利用停止、提供停止
個人情報が適法に取得されたり管理されたり提供されている場合に利用の停止、提供停止を請求することができる(36条)。
(注)上記の請求は下記のものに関しては適用されません(124条)。
刑事事件若しくは少年の保護事件に係る裁判、検察官、検察事務官若しくは司法警察職員が行う処分、刑若しくは保護処分の執行、更生緊急保護又は恩赦に係る保有個人情報(当該裁判、処分若しくは執行を受けた者、更生緊急保護の申出をした者又は恩赦の上申があった者に係るものに限る。)については、適用しない。
自己情報を開示請求する。
開示請求はすべての人が行うことが可能です。未成年者等の法定代理人による請求や、委任状による任意代理も可能となっています。
また、被相続人(死者)に関する情報に関しては
①死者に関する情報が同時に遺族当の生存する個人に関する情報であって。
②当該生存する個人を識別することができる場合に限り。
生存する個人にとっての「自己を本人とする保有個人情報」に該当するとして開示請求の対象となる。とする取扱いがなされています。
自己情報を開示する場合には、情報を保有している機関に請求書を提出して行います。請求書は窓口でもらってもいいでしょう。また、多くの行政機関では自己開示請求事務に係るHPページを用意していますので当該ページから請求書の様式をダウンロードする事もできます。例として総務省HPリンク
また個人情報保護法に基づく開示請求では、本人確認手続きが必要となるために請求書に添付して提出することが必要です。例として)本人の運転免許証、マイナンバーカード等。代理人の場合(法定代理)戸籍謄本(委任状代理の場合)本人の身分証明書、代理人の身分証明書+委任状)です。
請求書を作成するにあたり大切となるのが「開示を請求する保有個人情報」の記載です、これは情報公開でいう文書の特定に必要な記載と同様に申請の中核をなす部分であると言えるでしょう。
ただ、行政機関情報公開請求と異なり、自己の情報を開示請求する際には、自分が行政に提出したり調査を受けたりと自己と行政とに何らかの係わりがある場合が多いと存じます。ですから、その係わりに関する事柄から、作成、保有しているであろう文書を請求することができます。この点、情報公開請求よりも自己情報公開請求書の作成は、比較的やりやすいと感じます。(例)〇年〇月〇日に私が提出した○○とか。
その行政機関に自己の情報があるかないか分からない場合もあります。その場合には、窓口で相談しながら進めることも一つですが下記の個人情報保護ファイル簿を検索して開示請求することも不可能ではないと思います。
行政機関の保有する個人情報はファイルとしてまとめられています(個人情報ファイル簿)。個人情報ファイル簿は公表されているのでどのような個人情報が取得されているのかを確認することができます。個人情報ファイル簿の検索e-govリンク
開示請求書の補正が出たら
補正に関して
行政機関等は提出された開示請求書に形式上の不備があるときは(ア)開示請求書を拒否する。(イ)相当の機関を定めて補正を求める。と行手法7条に定められています。他方、個人情報保護法77条3項では「、、、補正をもとめることができる。」と書かれています。
この二つの条文を併せて読むと、行政機関等は、開示請求書に形式上の不備があるときは
(ア)開示請求書を拒否する。
(イ)相当の期間を定めて補正を求める。
という選択ができるということになります。なお、3項では補正の際に「情報提供をするように努めなければならない。」と努力義務を課しています。#
このように条文上はなっておりますが、行政機関等は多くの場合に、(イ)の相当の期間を定めて補正を求めることが多い取扱いとなっております。
補正が出たら補正の指示に従って補正を行います。また、求められる補正の内容によっては、請求者にとって法的義務の無い「行政指導」の性質を有することもあり得ますので担当者と話し合いましょう。
#「努力義務」に反したとしても、一般的には「違法」と評価される可能性は低いと考えられます。
コラム
補正と行政指導
行政指導はあくまでも相手の任意の協力によって目的を達成するものです。お願いベースです(行政手続法第32条)。ですので、この点は行政機関との交渉の余地があります。
そこで、行政機関により求められた補正が単なる行政指導として行われているのか、又は不適法な請求書の補正として行われているのかどうか?を見極めることは、交渉の余地があるかどうかに係るために重要です。
開示請求に詳しい人であれば、条文やガイドラインに照らして、開示請求者にとって従う義務の無い「行政指導」であることが分かります。しかし、一般的に、その判別は困難であるように感じます。
そこで、その場合には「そのことを理由として不開示決定や拒否がおこなわれるのでしょうか?」と聞いてみましょう。
そのとき、「不開示とはならないと思うのですが、私どもとしては、、、、。」等の答えならば行政指導の可能性が高いと考えることができるでしょう。
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資料
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