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開示請求からみる、行政裁量

 

いわゆる行政裁量

行政は法律により行われることを原則とします。法律による行政の原理と言われています。

その法律の立法は国会の仕事です(憲法41条)。しかし、すべての事柄に関して法律をつくることは不可能ですし適当ではありません。

そこで、法律の執行を行う行政に、ある程度の判断を任せることが考えられます。

裁量は、法律の定め方に表れます。例えば、「行政庁は○○をすることができる。」と書かれている場合には、○○をしないこともできます。ここから、法律が、行政庁の判断に裁量を認めていることが分かります。反対に「行政庁は○○をしなければならない。」と書かれている場合には、行政の裁量は狭いことが読み取れます。

代表的な判例(マクリーン事件)

有名な判例の一つにマクリーン事件があります。マクリーンさんが、在留期間の更新を得られなかったことを争ったものです。

判示は、法務大臣が在留期間の更新の許否を決するには、さまざまな国益や国際情勢、外交関係などの諸般の事情をしんしゃくして的確な判断をしなければならない。そのような判断を行うには、出入国管理行政の責任を負う法務大臣の裁量に任せるのでなければ適切な結果を期待することができない。と述べています。

最判昭和53年10月4日裁判所HPリンク

裁量に対する司法審査

行政の裁量に対する判断は消極的にならざるを得ません。その理由として、法律が認めた行政裁量を司法が覆すこと、それ自体が違法となる可能性があるからです。

そこで、上述の判例は司法審査の基準として、「処分が違法となるのは、それが法の認める裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限られるのであり、また、その場合に限り裁判所は当該処分を取り消すことができるものであって、行政事件訴訟法30条の規定はこの理を明らかにしたものにほかならない。」と述べています。

情報公開法に表れる裁量

行政機関情報公開法は、行政機関等は、何人からの請求に応じ、原則として情報を公開しなければならないとすること、を基本として構成された法律です(法3条)。

原則の例外として、行政文書を開示しないことができるとされています(5条)。この、開示しないことができるという要件の中に、行政庁の裁量をある程度広く認める条文があります。

5条3号、防衛や外交等に係る情報

防衛や外交に係る不開示情報を定めた条文です。

公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報

とされています。条文上の文言の中で、「、、、不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」と書かれています。

このことは、不開示(黒塗り)とされた取扱いを正しいかどうか判断する場合に、裁判所は、外交上の不利益があるかどうか?を判断できないことを示しています。この場合において、裁判所は、行政機関の不開示とする判断が「相当の理由」に基づいているかどうか?を判断することになるということです。

その結果、行政機関は、裁量の範囲の中で合理的な理由に基づいて判断したことを裁判所に対して説明すれば良いことになります。

5条4号 公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼす情報

犯罪の予防、鎮圧又は後訴の維持、刑の執行等の公共の秩序の維持に支障を及ぼす情報にも裁量が認められる書きぶりがされています。

公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報

ここでも「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」とされています。

裁量判断に対するアプローチ

上記のような書きぶりがなされている条文では、上述のように、行政機関の長は「相当の理由」の範囲内で裁量が認められるのですが「相当の理由」はどの程度厳しく判断することができるのでしょうか?

行政裁量の判断に関しては、上述のマクリーン事件が引用されることが多いので参考になりそうです。しかし、マクリーン事件は広域な裁量の基準を立てています。

他方、最判昭和37年1月22日は一般旅券の発給を拒否する事案に対して、マクリーン事件よりは司法審査が及ぶ範囲を広く取る基準を立てています。

このことについて、東京高判平成26年7月25日では詳細に述べて情報公開の裁量判断にあたっては昭和37年最判判決の基準によるべきだとして、行政機関による「相当の理由」に対して、慎重に判断しています。https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=84782

東京高判平成26年抜粋↓

したがって,行政機関の長は,情報公開法5条3号,4号所定の不開示情報にあたると判断して不開示処分をした場合において,当該不開示処分の取消訴訟が提起されたときは,当該判断の公正妥当を担保するに足りる,可能な限り具体的な事実関係に基づく合理的な根拠を示すことを要するものと解するのが相当である。外務大臣が同条3号所定のおそれがあると認めることにつき「相当の理由がある」といえるかどうかについて判断する場合にあっては,我が国を取り巻く国際情勢,我が国と当該他国又は国際機関との従前及び現在の関係,これらをめぐる歴史的経緯及び事象,我が国の外交方針,我が国と当該他国又は国際機関との今後の交渉及び将来の関係の展望等に関する事実を総合的に踏まえて,他国又は国際機関との上記おそれの根拠があると合理的に判断することができる場合であることを要するものと解するのが相当である。したがって,裁判所は,上記各事実を斟酌して上記の場合に該当するかどうかを判断すべきものであり,その判断は,外務大臣の判断が全く事実の基礎を欠いているかどうか,又は事実に対する評価が明白に合理性を欠いているかどうかなどに限定されるものではないと解するのが相当である。

審査請求での活用

行政機関に裁量が認められている場合での審査請求において、行政機関側は、広い裁量を有していることを主張する場面が考えられます。

上述の判例等を踏まえて、個別具体的に検討を加えることが考えられます。

当事務所の紹介

東京都中野区、北原伸介行政書士事務所では開示請求に関する相談、代理等を行っています。また、特定行政書士制度を利用した審査請求(不服申立)も行っております。

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北原 伸介

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