(情報公開)会議と議事録、閣議、省議の状況は?
行政機関等にはさまざまな会議や打合せ、審議会などがあります。このページでは、情報公開請求の視点から、そのような会議等を見ていきます。なお、情報公開個人情報審査会における答申の内容等は筆者が簡略化して表現しているため、正確性確保のためには原文にあたっていただきますようお願いします。
目次
会議と言ってもさまざまな形がある。
行政機関に限らず一般の会社でも同じことが言えるのですが会議と言ってもさまざまな形があります。ミーティング、打合せ、調整、連絡などなどそれが会議なのかどうなのか?との疑問が生まれそうですね。
行政機関の会議もそれと同じなので「会議」と一括りにしないで、その内容や状況から判断して個別具体的に会議体の性質を紐解くことが必要になります。
ただ、行政機関では一般企業とくらべると「法律で定められた会議、審議会、委員会」が非常に多くあるということができます。
一般企業で法律に定められた会議としては、株主総会、取締役会、各種理事会などがあります。
行政機関による会議や審議会などで法律で定められているものには行政組織法上の意味があり、議事録や審議会を公表すべきものや、政府に意見を言うことができるものなどさまざまな役割があります。
そのような合議体が必要な理由としては以下のようなことがあります。
・政府から独立した機関が判断する必要がある。
・すぐれた専門性を有する有識者の意見が必要である。
・委員会、審議会の有識者である国民に議事をかけることにより政府の政策を冷静に見直す機会を与える。
情報公開法と会議、審議
情報公開の観点からみていきます。
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下、情報公開法という。)に会議、審議に関して以下の内容が書いてあります。
1,国民が情報の開示を請求した場合には、行政機関等の情報は原則として開示しなければならない。
2,1の例外として、行政機関等の審議検討又は協議に関する情報であって、
ア、公にすることにより率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるもの、
イ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがあるもの
ウ、特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの
は、原則の例外として不開示とする(情報公開法5条4号)。
この条文の文言に該当する情報は開示されないことになります。
コラム、おそれ
上記のア、イ、ウではいずれも「おそれ」とされています。「おそれ」は非常に抽象的な文言であるために、審査請求や訴訟の場で争われることが多い文言です。開示請求を行った場合で黒塗りされて出てきた場合や不開示とされた場合には「おそれ」があるかどうか考えてみましょう。
また、ウ、では「不当に」利益を与え、、又は、、。とされています。「不当に」も注目されます。
その他不開示情報に関しての過去記事(情報公開法)黒塗りどこまで。審査基準を読む
そもそも公表されている議事録等もある。
委員会や審議会の議事録などは、HPなどで公開されているものも多くあります。行政に関する情報を広く公開することは「国民に対する説明責任」や「行政の透明性」に資することであるので非常に好ましいことです。
公表する取扱いであるかどうかは各省庁の設置法や内部規則である規則細則や事務のガイドラインに書かれています。
昨今(令和6年)では、新しい政策をつくる前に審議会や委員会を内閣府又は内閣官房で行う傾向があります。行政の統制機関である内閣の事務を行う内閣官房や各省庁よりも一段上に格付けられている内閣府では、多くの議事録等が公開されています。
法律や規則細則などを読むのは大変かと存じます、その場合には各省庁HPの検索欄にキーワードを打ち込んで検索してみることも考えられます。
公文書管理委員会の状況
公文書管理委員会では会議、審議会等に関して以下のような発言が見られました。
公文書管理委員会12回
・議事録に関しては、公文書管理法あるいはガイドライン上は、議事録を必ず作成しなければならないとなっているわけではない。と発言されているところ現在の条文では「閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯(公文書管理法4条2号)」に規定されている。
・会議に関しては様々なものがあり「情報交換の場であって、決定や了解を行う会議でないものがある。
・設置根拠が不明確な会議にで、事務的なお世話をする省庁をどのように位置づけるか(所管なの?)かが問題になる。
・12回公文書管理委員会の時では、議事の内容の記録を残せることができるのであれば、必ずしも、議事録、議事概要という形で残す必要はないと述べられている。
・議事概要を残したとしても項目柱だけのものとなってしまうと、将来世代が合理的に検証できない事態となってしまうという指摘があります(第12回公文書管理委員会)。
・議事概要をつくるには、議事録を全てまとめる必要があるから議事録をそのまま提出する方が楽だ。という意見があります(12回公文書管理委員会)。
・なお、審議会等や懇談会等については法第1条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに等が行政機関んお事務及び事業の実績を合理的に跡付け又は検証することができるよう、下位さ日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載した議事の記録を作成するものとする。
公文書の管理に関するガイドライン11頁
さらに、審議会等に関しては議事録を速やかに公開することを原則とする(平成11年閣議決定)。
審議会等の整理合理化に関する基本計画平成11年4月27日PDFリンク
・議事録、議事概要の質の点では、政務三役委員会の議事概要のように簡単に済ませてしまうものもあれば、非常に詳しく作成しているところもあるという(第14回公文書管理委員会、参照)。
・掌握事務に関する単なる照会・問合せに対する応答行政機関内部における日常業務の連絡・打ち合わせなどで「処理に係る事案が軽微なものである場合」は文書を作成しなくとも良い(ガイドライン、最終改正平成29年10頁)。
・情報公開を使うことにより、作成・公開された議事概要とそのもととなった職員のメモを突き合わせることにより議事概要から落とされていた発言を知ることができる可能性がある。18回公文書管理委員会
・すべての会議等に関して録音はできないか?
録音に関しては、事実をさかのぼる上で非常に重要であることに関して、意見は一致しているようです。
しかし、会議等によっては、一つのテーブルでで複数名が同時に自由に話し合う形式のものもあること、録音の設備等に関して十分な設備を用意できない場合がある(ボイスレコーダーのみでは記録できない環境がある)ことから現実的ではないと議論されています。
政府の重要な意思決定に係る会議に関する記録作成の在り方について
閣議について
閣議の出席者は、国務大臣、総理、特別職である内閣法制局長官と3人の官房副長官です。参事官等の事務方は入っていないのですが、閣議を主宰する立場である内閣官房のトップである官房長官が文責を負うので、官房長官の指示を受けて事務方の方で議事録を作成するという事務の進め方となっているようです。その際に、事務方は閣議に出席しているわけではないので議事を作成し、出席者に確認をとっているということです。
閣議記録については、当然に公文書管理法、情報公開法の適用の下に置かれます。なお、ホームページに閣議の議事は公開されています。首相官邸HPリンク
平成11年の国務大臣答弁の概要~議事録作成にいたるまで
平成11年国務大臣答弁 内閣法によると、「内閣がその職権を行うのは閣議によるされている。したがって、内閣としての最終的な意思決定は、その構成員である総理及び国務大臣の合議により行っている。
このような閣僚同士の議論は、特に重要な国家機密や高度に政治性を有する事柄をもふくめて、自由に至んなく行われる必要がある。
また憲法により、国会に連帯して責任を負う内閣であるから、対外的に一体性、統一性の確保が要請されるところである。これらの事柄から、閣議の議事録を作成しこれを公開することは適当でないと考えて、(議事録を)つくっておりません。議事録検索リンク
→その後、公文書管理委員会等で問題となり、現在では議事録等が作成されることになりました(平成26年3月28日閣議決定、閣議等の議事の記録の作成及び公表について)リンクPDF。
(平成26年3月28日、内閣官房長官決定、閣議等の記録の作成及び公表要領)上記PDF 最後のページ。
なお、情報公開法上、不開示となる事柄は削除して公表しているということです。
閣議等の記録の作成及び公表要領によると、内閣総務官が「作成補助者」になっているが、議事録作成にあたり作成補助者が残したメモは、個人のメモという取扱いになる(2016年第36回公文書管理委員会、事務方説明)。←この点、組織共用性の解釈問題があると感じます筆者はメモでも組織として使われているのであれば公文書として保存しなければならないと考えます。
第18回公文書管理委員会、岡田副総理意見概要
実は閣議というのは、実際には事前に調整された文書を閣僚が読み合うというのが実態で、基本的には自由な意見交換は閣僚懇でやるというのが実情。
・公文書の管理に関するガイドライン(平成29年最終改正)(別表1保存期間基準)において、ファイル管理簿に掲載されている閣議に関する文書は「閣議を求めるための決裁文書及び閣議に提出された文書」として保存するように指示されている。
・公文書の管理に関するガイドライン(最終改正平成29年)では、「閣議案件については、、、、主管局長や主管課長における経緯・過程について、文書を作成することが必要である。」と記載されている。閣議ではなく「閣議案件」と記載されていることから閣議そのものなのか?
この点、公文書管理委員懇談会では「閣議につきましては行政の最終的な意思決定の場であることから、議事概要・議事録を作成・保存することが望ましい」との内容の記載をする方向であったようである。なお、閣僚懇談会も同じ。
省議(政務三役会議等を含む。)
省議とは何か?に関しては明確な定義はないようです。公文書管理委員の議事によると、公文書管理法制定前は、省議は決まった形もなく記録もあったりなかったりしていたとのことです。各省でのやり方も異なるようですし、あいまいな概念です。
この点、法務省HPの説明によると「法務大臣、副大臣、大臣政務官を含む法務省幹部により構成され、法務省の重要事項の審議決定、法律案並びに重要な政令及び省令案の要綱の審議決定、予算案の審議決定を行う」と説明されています。
公文書管理委員会懇談会によると、省議に関する基本的な考え方として、「各省大臣等が意思決定を行う上で常用な決定や了解が行われる場合には、議事概要・議事録を作成することが望ましい。一方、これらの会議は一省内の会議であるため、型にはめたルールにはなじまない。」という考え方を基本としていたようです。
行政文書の管理に関するガイドライン(平成23年4月1日内閣総理大臣決定)11頁では、それらの記述はなく、「、、、、、、記録を作成するものとする。」と記載されています。
政務三役とは大臣・副大臣・大臣政務官をいいます。省議の中の最終的な意思決定を行うとされています。公文書管理委員会では政務三役会議の最終の意思が公文書として残ることは、国民が決定の過程を将来的に終えるようにするためにも、非常に役立つというような意見が述べられています。
閣僚会議
閣僚会議は「国務大臣を構成員とする会議」といわれています。開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容、の6項目を記載した「議事の記録」を残すとされています。閣僚会議も、適切に「議事の記録」を残すとする運用になっています。
「議事の記録」の概念は、従来では、「議事概要又は議事録」とする運用がなされていたところ、議事概要にはとても簡素なものがあり記録として不十分であったことが公文書管理委員会で指摘されていました。そこで「議事概要又は議事録」を「議事の記録」との表現に変えて必要な記録がなされるように明確に表現したものと筆者は理解しています。(「閣議等の議事の記録の作成及び公表について」平成26年3月28日閣議決定も参照。)
議事の内容に関しては、議事録ほど詳細に「ええ」とか「はい」と書く必要はないものの、議事録に近い感じで「結論に至る過程を追跡でき得るもの」と考えて公文書管理委員会を進めて欲しいという内容の発言があります(2014年第36回公文書管理委員会、参照)。
歴史的緊急事態に対応する会議等における記録の作成の確保
東日本大震災時の公文書の管理が問題になり、以下のガイドラインが加えられました(第17回公文書管理委員会)。
以下、公文書の管理に関するガイドライン12頁より。
個別の事態が歴史的緊急事態に該当するか否かについては、公文書管理を担当する大臣が閣議等の場で了解を得て判断する。
以下の基準は、目安としてのもので基準ではないとのことです。第18回公文書管理委員会
① 政策の決定又は了解を行う会議等
開催日時、場所、出席者、議題、発言者及び内容を記録した議事の記録、決定又は了解を記録した文書、配布資料 等を作成・保存する。
② 政策の決定又は了解を行わない会議等
活動期間、活動場所、チーム編成、活動の進歩状況や状況確認事項を記載した文書、配布資料 等を作成・保存する。
※②に関しては、東日本大震災時の「被害者生活支援チーム」において、議事録を作成することが困難な性格のチームがあることから検討された内容です。同チームの頻繁なミーティングは、分離、集合、同時にといった性質のもで記録の作成は行われていたものの、議事録という形で記録することは困難な状況でした。公文書管理委員会では、このような形態の会議を「事務事業型」と表現されています。
・歴史的緊急事態に対応する行政機関においては、当該事態に対応する会議等について、事前にマニュアル等を整備し、記録の作成も含めた訓練等措置を講ずる必要がある。
・歴史的緊急事態が発生した場合には、記録の作成・保存に関する責任を負う行政機関が、マニュアルに沿った対応がなされているか適時点検する必要がある。
マニュアル等で想定されていない事態が発生した場合には、適切な記録が作成されているか確認する必要がある。
・公文書管理法においては、行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程及び実績が把握できる文書の作成が求められているものの議事録又は議事概要の作成が一律に求められているものではなく、また、事後に作成することも許容される。
したがって、会議等の議事又は議事概要が作成されていないことを直ちに公文書管理法に違反するということにはならないが、被害日本大震災が我が国にとって未曽有の国難であり、国民の関心や社会的影響が大きな事案であることを踏まえれば、東日本大震災に対応するために設置された各会議等において、より積極的な議事内容の記録作成を行うことが望ましかったと考えられる(第15回公文書管理委員会、8頁)。
・各行政機関の外部の者との打合せ等の記録については、文書を作成する行政機関の出席者による確認を経るとともに、可能な限り、当該打合せ等の相手方の発言部分等についても、相手柄による確認等により正確性の確保を期するものとしている(ガイドライン13頁)。
答申等
経済産業大臣
令和5年10月2日(令和5年度(行情)答申354号ほか)
審査請求人の主張
・経済産業省WEBサイトに2025年国際博覧会検討会では議事要旨が公開されている。一般的に議事要旨とは議事録を基に簡略化した成果物である。したがって、議事録があるので公開して欲しい。
諮問庁の説明
・当該検討会及び配布資料は原則として公開するとともに、議事要旨は速やかに作成し公開することとしている。当該ウェブサイトでは、出席者の氏名とともに当該検討会の詳細な内容を公開している。このため、当該情報以上の詳細な議事録に該当する文書は経済産業省では作成も取得もしておらず保有していない。
(私の感想)
議事要旨のもととなる情報は、議事録に限定されずにさまざまな情報があること、(例えば録音や速記など)を踏まえれば議事録がなくとも、議事要旨が作成されることはあり得ると思います。この点は、公文書委員会でも、「議事録」にこだわりすぎると正確な情報に遡ることができる情報が抜け落ちてしまうために、こだわりすぎることに注意が必要であると議論がなされていました。
令和5年(行情)答申197号リンク
法務大臣
法制審議会部会資料のうち、政党からの要望等が記載されている文書については、公にすることにより、政党の権利その他正当な利益を害するおそれがあるとして不開示とされた。(当該文書は、非公開を前提として法務省が取得したものであった。)
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北原 伸介
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