(情報公開請求)特定の営業所に行政指導が行われたことを示す文書を情報公開請求できる?
特定の会社や営業所に行政指導が行われたかどうか?また、どのような指導があったのか?という情報を、行政機関等に対する情報公開請求で開示することはできるのでしょうか?
なお、当事務所では情報公開請求の代理、代行などの事務を行っております。よろしくお願いします。
目次
(ア)東京都の美容室が行政指導を受けた際の文書を情報公開しようとした事例
諮問第661号で、審査請求人は、特定の美容室に関する行政指導が行われた際の「環境衛生指導注意票(控)」について情報公開請求を行いました。→存否応答拒否となりました。
審査請求人は、上記の処分として諮問を行います。
理由
・違法もしくは不当な事業活動をしているから、東京都情報公開条例(以下、情報公開条例。)7条3号ロに該当し開示すべきである。
・情報開示をすることで、生活者に適正な行動を促し違法行為や不適正な行為に対する抑止や早期の改善が期待される。
異議申し立てに対する実施機関の説明
・「環境衛生注意指導票」は立入検査時に環境衛生監視員により関係法令に違反する事実が確認され、当該違法行為については、文書をもって指導することが適当と判断された場合、営業者に対して交付するものである。その情報は条例3号及び6号に該当する非開示情報を開示することとなるため、存否応答拒否とした。
(イ)特定労働基準監督署が特定事業場の労働者過半数代表選出に関する指導等にあたって交付等を行った指導票等の控え等が公開請求された事例
平成29年答申236号では厚生労働大臣に見出しの文書の開示が争われました。
本件の行政指導は、労働基準関係法令の適正な運営及びその確保の観点から、幅広く臨検監督等を行っており、およそ事業者として事業活動を行い労働者を使用していれば、当該監督の結果何らかの指摘を受けあるいは当該指導に基づき報告を行うことは、必ずしもまれなものではないと判断されました。そうであるから、存否応答拒否は適当ではないと結論付けています。
他方、文書の内容に関しては、労務管理に関する内容が個別具体的に記載されていることから、特定事業場に対する信用をていかさせ、取引関係や人材確保の面等において、同業他社との間で競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとして不開示としました。
結論
上記アとイでの違いとしては、アの行政指導は違法、不当な営業に対して差出される文書であることに対して、イでは違法、不当に関係なく幅広く行われる行政指導に際して作成される文書です。そのことから、イの行政指導が行われたと言いう事実が公表されたとしても、事業者にとって特段の不利益を被ることはないであろうという判断がなされました。
このように、行政指導といっても各々の性質があるので「行政指導」=開示不開示という判断をすることはできないということが分ります。
一般的には情報が公開される可能性は低いと言えます。
しかし、その事業所が公表している場合や行政機関により公表される取扱いの場合には、公表される可能性があるでしょう。
また、公開されていたといっても、時の経過を考慮しなければなりません。令和4年(行情)答申179号では、プレスリリースをされていた情報であっても3年4か月が経過していることから、今では公表されている状態と言えないと判断が示されています。リンク
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北原 伸介
情報公開請求や公文書の管理に関心が強い行政書士。
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