東京都外国人美容師育成事業
こんにちは中野区行政書士で美容師の北原です。
東京都では、外国人美容師育成事業が、国家戦略特区における特例措置として始まりました。資料も出そろってきたので制度を学んでゆきます。
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外国人美容師育成事業の概要
美容師免許を取得した外国人の方が、一定の要件を満たせば、美容師として最大5年間就労可能となるものです。(在留資格は「特定活動」となっております。)
目的
事業要領には、目的規定が定められています。
「目的規定」とは、要領の目的を簡潔に表現したもので、要領の全体の純解釈・運用の指針となるものです。石毛正純『法制執務詳解新版Ⅱ』平成24年6月29日70頁、参照
国家戦略特別区域外国人美容師育成事業実施要領では以下のように定められています。
第1 目的
この要領は、我が国で美容に関する実践経験を積んだ人材の海外における活躍を推進することを通じて、日本の美容製品の輸出による産業競争力の強化やブランド向上を含むクールジャパンの推進を図るとともに、インバウンドの需要に対応するため、日本の美容師免許を有する外国人材を育成する国家戦略特別区域外国人美容師育成事業(以下「本事業」という。)に関して、その実施に必要な事項を定め、もって本制度を適正かつ円滑に実施することを目的とする。
読みにくいですが、ポイントは「わが国で美容に関する実践経験を積んだ人材の海外における活躍を推進することを通じて」という手段の部分です。
つまり、この事業では手段が限定されているということです。そうして、結果的にクールジャパンが推進されることやインバウンドの需要にも対応できるであろうといことが書かれていると思います。
ちなみに、 国家戦略特区事業として認定されるための国家戦略特別諮問会議(令和2年3月18日)において、内閣府に対して説明された資料をみると「わが国での美容に関する実践経験を積んだ人材が海外で活躍することを通じて、日本の美容製品の輸出による産業競争力の強化やブランド向上を含むクールジャパンの推進やインバウンド対応のため、、、。」と説明されています(戦略特別区域諮問会議資料3-1)
同会議では、制度をつくることに対して、厚生労働省や全美連が同意したことを英断だと評価するような八田議員の発言があります。
東京都や監理実施機関に掲載されている資料には「人で不足の解消ではない」と注意が書かれています。その理由は、制度運用の方向性を見失わないためであると思います。
管理実施機関について
「管理実施機関」とは、美容産業の発展に資する取組を実施し、かつ、美容に係る専門的知識を有する機関のうち、で用意された要件を満たすことの確認を受けた機関です。
東京都は公募により管理実施機関を公募します。現在のところ「一般社団法人外国人美容師管理実施機関」が管理実施機関として決定されました。申請があったのはこの1社であったようです。
私の印象としては、「育成機関である美容室を監理する機関で、マッチングや外国人美容師の保護などもを行う機関」という印象です。
主な業務内容として
- ①育成機関(美容室)及び外国人美容師の基準適合性を確認
- ②育成機関(美容室)と外国人美容師のマッチングを行うこと
- ③育成計画の確認・意見付与
- ④育成状況の評価
- ⑤育成機関からの報告の受領及び聴取
- ⑥育成機関の監査
- ⑦外国人美容師との面接等
- ⑧外国人美容師の保護
- ⑨外国人美容師の雇用継続が不可能となった場合の措置
などをおこなうようであります。
育成機関の美容室
育成機関たる美容室は、次に掲げる業務を行う。とされています。
- (1)外国人美容師の雇用に関すること。
- (2)育成計画の作成及び申請に関すること。
- (3)外国人美容師の修得状況確認及び適切な指導に関すること。
- (4)監理実施機関への報告に関すること。
- (5)監理実施機関の監査にかんすること。
- (6)外国人美容師の保護に関すること。
- (7)その他、本事業の適正かつ確実な実施のために必要なこと。
なお、育成機関が行う美容技術の指導は総合的な美容の技術の指導となっているためにカット専門やカラーリング専門店では育成機関となれないと解されます。
しかし、美容業界ではカラーリストを設置するなどの技術における専門性が高まっています。この点には個人的な疑問を感じます。
育成機関になるためには
育成機関になるためには基準適合性について、に対して確認を求めます。
その後、育成計画の申請を、監理実施機関に提出します。その後、東京都より育成計画の認定通知がなされるとのことです。
育成機関に求められるおおまかな条件は、すべては書ききれませんが例として以下があります。
- 健全かつ安定的な経営状況
- 管理美容師を置いている。
- 欠格要件として、・暴力団員等でなく、暴力団員等が事業を支配していない。・破産手続き開始の決定を受けて復権を得ていない。・禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者・その他、こまやかな欠格要件があります。
- 労働に関する法律の規定及び社会保険に関する法律の規定を遵守していること。。
などなど。
安定的な経営状況を疎明する、財務諸表等に問題がなければ、育成機関になるための要件の難易度は、意外に高くない印象があります。
また、財務諸表に問題があったとしても、「債務返済計画書」や「経営診断報告書等(おそらく、会計士や税理士さんなんかが作成する書類、産廃申請などで求められることがある。」で財産的基礎に問題がないことを証明できれば良いとの記載があります。「東京都外国人美容師育成事業育成機関設置基準」、参照
しかし、問題はここからだと思います。
育成計画の要件が厳しい
育成機関は育成計画を作成する必要があります。上記の問題は、育成計画で求められる要件が育成機関になるための要件より厳しいからです。
例えば、外国人美容師のための、苦情・相談窓口を設置しなくてはなりません。
他にも、外国人美容師のための生活指導を行う者を設置すること。また、外国人美容師の帰国旅費も確保しておかなくてはなりません。
このように、外国人美容師の方にとっては非常に良い制度となっているように感じます。
以下参考記事として。(東京都)外国人で美容師を目指す
当事務所のお手伝い
この制度は、国家戦略特区として試験的に始まった制度です。そのため、事例もありません。監理実施機関、育成機関ともに手取り足取りでの運用になると感じます。当事務所はもともと美容師であったこともあり、手伝えることもあるかと思います。お気軽にお問い合わせください。美容関係の業務
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北原伸介行政書士事務所
北原 伸介
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