違法看板を自力で動かすことの問題性
ネットの記事なので裏はとれていませんが、「正論おじさん」たる記事を見つけました。正しい事実関係の裏はとってませんが、看板問題を考える上では有益であると思います。この事例を見ていきましょう。
事実関係としては、駅前などで歩道にはみ出した看板を無断で撤去し、看板を出した店舗に猛烈なクレームを入れるということです。
この男性のいい分としては、「違法だから」「法律に基づいて撤去している」とのことです。ここで、①法律に基づいているのか②一般人が「違法だから」勝手に撤去してよいのか。に整理してみます。
目次
公道に置き看板を置いていることは違法なのか?
当たり前のように置かれている置き看板ですが、道路法第43条2号によると、「みだりに道路に土石、竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞れのある行為をすることを何人もしてはならない。」ということが書いてあります。
原則として道路上で何かをするときには、行政手続きが必要です。
建設業者さんたちは工事などで道路を使用しなければならない場合には道路交通法77条による道路使用許可をとっています。露店、屋台等も同様です。
電気工事業者さんたちは電柱電線などの工作物のために、道路を使用している場合には、道路法第32条による、道路占用許可をとっています。
それでは、置き看板ではどうでしょう。東京都では置き看板のための許可は原則として取れないことになっています。東京都屋外広告物のルールに関するチラシhttps://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/koukoku/kou_siori.htm
ですので、置き看板は原則として違法であると言えそうです。ちなみに、東京都では看板を出そうとするときは、事前に都への相談を推奨しています。屋外広告物条例は複雑であったりします。
違法だからと言って一般人が撤去することはゆるされるのか?
公道にある置き看板が違法だとして「一般私人」がかってに撤去することは許されるのでしょうか。結論から申し上げますと極めて例外的な状況でなければ、許されないと思います。
道路法による監督処分がみとめられているのは、道路管理者等です。それも、包括的な定め方がなされているわけではなく法律による一定の制限があります(道路法第71条)。その監督行為でもいきなり当然に看板を除去できるような仕組みにはなっていません(国民の財産身体への危険がある場合を除く)。強制力の発動には慎重なのです。それに対して、私人が看板を撤去できる根拠となる条項は見当たらなく、あっても民法720条正当防衛及び緊急避難が考えられますがこれは極めて例外的な状況でしょう。公道の管理に関しては、私人は権限がないのです。
私個人の意見ですが、道路の管理や広告物の管理は、行政機関が「法律による行政の原理」にそって定められた手続きで行うことになっています。私人が強制力を加えることは許されていません。それに、違法な看板を出していたからと言っても、事業者の業務を行う利益のすべてが否定されるなんてわけありません、ですから、私人が強制的に看板を撤去する行為が問題とされる可能性は高いといえそうです。このあたりは、弁護士さんに相談するといいです。
それでは、違法な看板で地域の方が困っているような場合にはどうすればいいでしょう?
考えられる方法としては、1警察に通報2直接事業者に伝える。3道路管理者に通報するなどの方法が考えられます。
警察に通報することが考えられます。しかし、警察は道路管理者でありません。場合によっては道路管理者に連絡してくれることも考えられますが確実性はありません。しかし、国民の身体や財産に対する危険があるような場合にはまっさきに警察に通報するべきです。機動的な動きが求められるからです。
直接事業者に伝えることも考えられますが、トラブルになってしまったり、言い合いになってしまったりする可能性もありますし効果的とは言えません。事業者の言い分としては「他の事業者も立て看板を出している。うちだけ、言われるのは不公平だ」との言い分が多いとおもわれますが、原則として違法に平等はないとされていることが通説。
行政にお願いするには?
それでは、事務的にも直接で最も効果的に通報できるのは道路管理者に対する通報です。ここで道路管理者とは法律的には大臣、知事や区長ですが、権限が委任されて建設事務を任せていますので道路を管轄する建設事務所等に対して通報を行うことが直通です。ですので、建設事務所管理課に連絡します。
通報するに当たっては、だれが、いつ、どこで、いかなる方法で、何をしたかを明確に伝えることが大切です。いうまでもありませんが、悪意による虚偽の通報などは虚偽告訴等などの犯罪として問題になりますし、行政の事務を圧迫することにもなりますので注意が必要です。また、住所に関してですが、グーグルマップのナビを利用している場合にポイントがずれるときがありますので必ずマップで確認してください。
電話などで通報を受けた行政機関は実際に調査に乗り出すかは裁量がありますのでわかりませんん。
もう一つの方法は、書面での通報があります。法令や規則、条例に基づく形式での書面を提出することになります。こちらは、申出後に調査を行うことが法定されているために法律による行政の原理により確実に調査をしてくれます。書面をしたためる必要があります、ひな形もございません。
当事務所のサポート
当事務所では上記の通報書面の作成サポートを行っています(有料)。ホームページよりご覧ください。
北原 伸介
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