自社の店舗閉鎖に伴って納入業者に在庫商品を不当に引き取らせた事例と申出るときの書面
自社の店舗閉鎖に伴って納入業者に在庫商品を不当に引き取らせていた疑いがあるとして、公正取引委員会が優越的地位の乱用(独占禁止法)の疑いで同社の本社など複数の関係先を立ち入り検査をしたようです。(ヤフーニュース)https://news.yahoo.co.jp/articles/6b7e25cdaf8fef4cd838352f0bc53851fcc7fe71
公正取引委員会のホームページによると「優越的地位の乱用」とは自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商習慣に照らして不当に不利益を与えることは、不公正な取引方法(優越的地位の乱用)として禁止されるとしています。
条文は独禁法2条9項5号に定義がありました。
5号ハ では取引の相手型からの取引に係わる商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係わる商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払いを遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手型に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。と定義されています。
優越的地位の乱用は不公正な取引方法の一つです。そして19条では事業者は不公正な取引方法を用いてはならない。としてそれに違反する行為があるときは、公正取引委員会は定められた手続きに従い、事業者に対し、当該行為の差し止め、契約条項の削除その他当該行為を排除するために必要な措置を命ずることができます(20条)
立ち入り検査は第47条4号に基づき行われた処分であると思われます。
第47条 公正取引委員会は、事件について必要な調査をするため、次に掲げる処分をすることができる。、、、、、、4号 事件関係人の営業所その他必要な場所に立ち入り、業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査すること。
独占禁止法にも、行政手続法の処分等行政指導の求めと似たような制度が用意されています。45条では、何人も、この法律の規定に違反する事実があると思慮するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置を取るべきことを求めることができる。としていて3項では、第1項の規定による報告が、公正取引委員会規則で定めるところににより、書面で具体的な事実を適時してされた場合において、当該報告に係わる事件について、適用な措置をとり、又は措置をとらないこととしたときは、公正取引委員会は速やかに、その旨を当該報告をしたものに通知しなければならないとしています。
行政手続法の処分等の申出の場合には、報告をしたものに対する事後の通知は定められていませんでしたが、公正取引委員会規則で定めるところにより書面で具体的な事実を適示されているものであるときは事後の通知を速やかにしなければならないとされています。
公正取引委員会規則で定める書面には事実関係での、記載するとよい事項が具体的に指示されています。行政手続法で求められる書面では、条文で記載事項が列記されています、その中には求める行政指導又は処分等の適用条文などの記載が求められています。それに対して、独占禁止法の45条書面では具体的な条文の記載は求められていないものの、事実関係に関する詳細な記載を求めているような印象をうけます。もっとも、行政手続法書面の方でも事実関係が詳細に記載されている方が行政が動きやすいことに変わりはありません。適用条文のあてはめなどは公正取引委員会でおこなってくれるようなので、一般国民としては独占禁止法の45条書面の方が利用しやすいようにも思われます。
また、独占禁止法45条書面は口頭で行うこともできます。公正取引委員会では書面の方が望ましいと記載されています。しかしながら、書面の作成が困難な方は口頭での申出も視野に入れるしかないでしょう、もしくは、書面の作成の代理の相談をいただければと思います。
最後に、どちらの書面も作成することができるときは、独占禁止法の書面を作成することになると考えます。行政手続法は一般法であるのに対して、独占禁止法は特別法とも見ることができるからです。
北原 伸介
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