大阪港湾局におけるIR用地に関する文書の不適切管理から思ったこと。
令和5年10月31日大阪市大阪港湾局総務課により報道発表がありました。
こちらのリンクに大阪市による説明があります。大阪市HPリンク
事案の概要
①令和元年度及び令和2年度に実施したIR用地に係る鑑定評価書の作成過程におけるメール及び添付文書等が開示請求された。
②不存在として却下した。
③令和5年4月メール資料が存在することが発覚した。メール資料は公開されています。大阪市リンク
④大阪市は職員ら4人を懲戒処分したと報道されています。
発生の原因
1、令和4年9月から11月にかけて、ネットワークサーバー上の情報を外付けハードディスクに保存→ネットワークサーバー上から削除した。そのことが職員の間で共有されていなかった。
2,情報公開請求担当の職員等(上司含む)はメール資料は保存期間が過ぎていると考えて廃棄済みであろうと考えて情報公開に対する不存在決定をおこなった。なお、サーバー上のメールの一部が削除されたのは開示請求の約2週間後である。
考察
開示請求後に、特定文書の保存期間が終了していることを根拠として事務を行ってしまったことに原因があると考えます。つまり、実際にサーバー上のメールを見分していなかったのです。また、今回のことから大阪市では、サーバー上のメールボックスには存在しなくても、バックアップである外付けHDに文書が残っている可能性があることが分かりました。なお、条例ではなく情報公開法の話になりますが、外付けにダウンロードしたとしても、それが一時的なものである場合には行政文書にあたらないとする解釈もあります(宇賀克也『新・情報公開法の逐条解説〔8版〕』有斐閣2018年、50頁参照。)
もう一歩
私は今回の件は、インターネット上を縦覧する程度に調べたのですが調べることが困難であると感じました。それは、以下の理由によります。
・大阪市のHPでは、事実の概要は述べられているものの、根拠となる議会での質疑などを特定できる日付やら委員会名が記載されておらず、議会の議事録を検索することが困難である。
・開示請求の文書番号などの記載もないので、後から事実を調査しようとしても国民の側からのアクセスが難しい。
近年では、国立国会図書館webcatなどによりインターネット情報も収集保存されていて、それらの情報も歴史的に意義があります。しかし、事の発端となった会議や文書の番号が記載されていないと調べることが困難になってしまいます。
例えば、その事件が過ぎてから5年とか経ってしまうとグーグル検索も役に立たなくなってしまいますし、報道機関によるインターネット報道も消えてしまっている可能性は高いのです。
文書番号や議会番号などは役所の手元にあると思います。ちょっとだけ手間をかけてもらえると資料としての価値が大きく上昇するのではないでしょうか?
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北原 伸介
情報公開請求や公文書の管理に関心が強い行政書士。
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