美容師さんの業務委託契約について
様々な働き方ができる、美容師業界。
さらに、この業界は多くの場所で働くことが可能な事から、美容師のみなさんも職場を変える機会が多いとおもいます。
職場を選ぶにあたって、さまざまなサロンの求人に目を通すことになると思います。その中で、業務委託契約である旨をしめされている求人を目にすることがあると思います。
業務委託契約と言われても、どのような点が雇用と異なるのか理解しづらい部分もあるかと思います。
今日は簡単に転職をするうえでの業務委託契約について、美容師さんの目線に立って考え見ます。
雇用契約について
みなさんがサロンで働くにあたっては基本的に雇用される場合が多いと思います。
雇用契約はみなさん経験があるとおもいますが、代表的な特徴としては
- 雇用保険、社会保険に入る。
- 有休がある。
- 残業手当がある。
- 固定給がある。
などの特徴があります。
雇用されているということから、事業主からのさまざまな指示にしたがって日々の仕事を行うことになります。みなさんがよく使う「拘束時間」という言葉は、雇用契約をイメージするにはちょうどいい言葉であるとかんじじます。
残業代や社会保険、有休、残業代、などは事業者に対して課される法定義務となります。法は、従業員を守るために事業者に縛りをかけていると言えます。従業員は守られているのです。
業務委託契約ってなにさ?
業務委託契約では、事業者と美容師の立場は基本的には同等として扱われます。イメージとしては事業者が美容師さんにお仕事をお願いして、美容師さんと条件を交渉しながら取り決める感じです。(ここでは、説明の簡易さを考慮して、独占禁止法、下請法によるフリーランスの保護に関しては記載しておりません、厳密にはいっていの力の差を経済法により保護しています。)
雇用契約とことなり、力関係の差を考慮しません。
なんで、事業者と美容師さんの力関係を無視するかと言われると、美容師さんは条件に納得いかないのであれば、仕事を受けないであろうということを原則として考えているからです。事業者と美容師さんを同等とかんがえます。
同等である以上は、美容師さんを保護する必要がありません。
ですので、業務委託契約では基本的に
- 仕事に対する報酬であることから、歩合制を原則とする。
- 事業者は美容師に対して細やかな指示ができない。(仕事の方法は美容師が担当する。)
- 雇用保険や社会保険がない、残業代や有給休暇なども原則としてない。
- 拘束時間も基本的になく、いつ働くかは話し合いによって決める。
- 施術に対する責任は、美容師が負担する。
などの特徴がみられます。雇用契約と比べると自由度が増しますが、労働基準法、労働契約法による保護を受けることがありません。また、雇用契約とことなり業務を委託することは双方の自由が働きますので仕事を失う可能性も高いと言えます。
このように考えると、事業者側にとっては都合の良いことが多くあります。たとえば、雇用では、多くの事業者は社会保険料を多く収めることとなります。(社会保険料は雇用主と事業者の折半)しかし、業務委託契約では社会保険料を納める必要がありません。労働規則なども定める必要がなく、従業員を管理する必要がありません。
美容師さんにとっては、業務委託契約は、勤務する日も自由であるし、報酬も歩合制を導入しているために魅力的に写るかもしてません。しかし、雇用契約と比べるとおおくの不利益があることに注意が必要です。
見せかけの業務委託契約にご注意。
ここまで見てきたように、美容師にとって業務委託契約の旨味は、「事業者と同等の立場に立って契約できること、自由であること」に求めることができます。
事業者の側からみると、業務委託契約とすることによって、労基法を潜脱することができてしまいます。
そのことから、表面上では業務委託契約と言っておきながら実態は雇用契約と変わらない契約を美容師と交わして業務を行わせるような状態は十分に考えられます。
そのような状態は、美容師にとっては不利です。本来の業務委託契約のうまみである自由もないのに、業務の責任は美容師が負担することになりかねません。
裁判所では、業務委託契約という名のついた契約でも、実態に照らして雇用契約と判断することもあります。ですから、美容師さんも業務委託契約であるはずなのに自由がない場合には注意して状況を判断する必要があります。
具体的に事業者による指示が細かいときなどは注意が必要となります。また、そのような事業者は脱法行為を常日頃から行っている可能性もあり避けるべきであると考えます。
業務委託契約の場合には、事業者と美容師さんは同等の立場で話し合うことが可能です。契約をする前に、十分に話し合うことが必要です。
北原 伸介
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